エノキタケ編(Flammulina velutipes)

 

寒くなると熱燗が恋しくなる。今宵は、キノコの話には「口にチャック」をしようと決意して

赤ちょうちんの暖簾をくぐる。

先客の飲み仲間に会釈しながらカウンターに腰を掛けるや否や、女将の甲高い声で「きのこ先生お通し」と言って目の前に出たのはエノキタケ料理の小鉢ではないか。

熱燗を口にしながらふと思わず「エノキタケの生える頃になったなぁ・・・」とつぶやいてしまった。

途端に、女将が「こんな寒い時期にキノコが生えるのですか?」と問いかけてきた。続くように飲み仲間たちも言い始める。ほとんどの人が冬にエノキタケが生えることを知らない。

また、100人中100人がビン栽培の白いもやしのような細いキノコがエノキタケと思っている。まして傘が栗色・黄褐色でこんな大きさ(1~3cmф)だよ、それに柄の根元が黒褐色であると告げると、みんなは「へぇ~本当!」と半信半疑のようである。

 

つい、女将の問いに口がすべらしたのを反省しながらも、野生のエノキタケは市販のものよりも格段に

美味しいと絶賛しながら、盃を重ねるのであった。

もっともエノキタケは、人家近くの道端のエノキ・カキ・ヤナギなど広葉樹の切り株や枯れ木に寄生する木材腐朽菌である。しかし、道端に出るものには犬のオシッコの洗礼を受けている場合もあると付け加えるとみんなに失笑を買ってしまった。

 

それにしても最近は、晴天続きの乾燥した日々のため、なかなか道端に見られない。エノキタケを見つけやすいには、雨か雪の降った後である。焼酎に手をやると不意に酔いが回ってきたようだ。

今宵はこれまで・・・と店をあとにする。   (徹)

 

 

 🍄エノキタケの見つけ方🍄

 

11月後半~3月初め頃・雨や雪の降った後、人家近くの道端の切り株や枯れ木に目をやると見つけやすい。

エノキタケは傘の中心部が栗色または黄褐色で周辺ほど色が薄く、表面はぬめりがあって光沢がある。特に、柄の根元が黒褐色であるので見分けやすい。

  

 

注意が必要なのは、よく似た毒の「ニガクリタケ」である。専門家は少しかじってみると苦いのでエノキタケと区別がつくと言われるが、素人はそのような事はしてはいけませんが・・・ぜひ見つけてください。

 

 

                                                                                                                          

 

       ⇧ニガクリタケ(毒)