十数年ぶりの大雪でメディアは賑やかだ。
雪化粧を見てこの下に生えるエノキ茸に想いを馳せるのは、道端のきのこに熱中するきのこ狂の吾輩のみであろうか。
思いはさて置き、いつもの様に暖簾をくぐると奥から「きのこ先生いらっしゃ〜い!」と透き通るような声で迎えてくれた。
今宵は居酒屋のお客も見当たらない。女将と熱燗でも飲みながらヒラタケ徒然に触れてみたい。
11月初旬、「畑近くにサルノコシカケのような変なきのこがたくさん生えている」との携帯電話によるお風呂(健康ランド)友達からの知らせである。
襞(ひだ)があり柔らかい灰色がかかったきのことの知らせである。季節柄ヒラタケと推測してすぐにカッターナイフとビニール袋を持参で現地に馳せ参じた。
なんと、見事なヒラタケ(写真1・2)が枯れかかった榎の大木の根元に群生しているではないか。榎の皮がはがれ、ヒラタケのほかにヌメリスギタケ(写真3)やアラゲキクラゲも生えているのを観て、大木の寿命に想いをめぐらした。
持参した小さなビニール袋では間に合わず、風呂友が用意してくれたゴミ袋に一杯のヒラタケを採集できた。計量してみると約5㎏もあった。
豊作だ! しかし、友達は用心して、道端のきのこは奥さんが嫌がるので、ヒラタケを持ち帰らないという。これはきっと毒きのこで3泊4日のオマルを抱えての入院生活体験者である吾輩きのこ狂を警戒してのことであろうか?
しかし、もう一人の風呂友に提供したところ、ヒラタケを食べたことがあるとのことで早速持ち帰って天日に干すとのこと。
後日、奥さん共々美味しかったと大喜びであった。そして、「一晩でヒラタケの真っ白な胞子が周りにたくさん散布されていた、その勢いに驚いた」との後日談である。
あの時は、一部を居酒屋に持ち込み、調理してくれたヒラタケ(砂糖としょうゆで油炒めした)をつまみにして、飲み仲間と盃を交わしながらきのこ談義となった。
「あのヒラタケは美味しかったわねぇ~!」との女将の言葉に今宵も良い気分でお店をあとにした。
その日我が家の夕食は鍋料理であったが、残念ながらヒラタケは見当たらずマーケットで購入した別の
きのこ(シイタケ・エリンギ・エノキタケ)であった。
これまた友達同様、奥様の用心深さの故か・・・?
(徹)
写真1
写真2
写真3